NEW : ALGORITHMIC DESIGN / INDUCTION DESIGN

WEB FRAME - II2011

WEB FRAME(2000)のバリアントプログラムによる生成
コンピュータプログラムで(課題を解いて)生成された建築

WEB FRAME2000

「WEB FRAME」 は課せられた要求条件をコンピュータプログラムで解いて形態を生成した、おそらく世界初の建築である。
地下鉄大江戸線飯田橋駅の地下に発生した「WEB FRAME 」は、必ず守るべき「絶対条件」と、概ね守ればいい「設計者の意図」との、2種類の条件のもと、ネットワーク状の架構を生成する。
その生成過程は、地下に埋め込まれた植物の種子が発芽し、水や柔らかい土壌を探し、重力に従いながら根をのばして成長する仕組みに似ている。

WEB FRAME - Ⅱ2011

「WEB FRAME」 から10年後、新しい「WEB FRAME -Ⅱ」が設計された。
利用者の増加とバリアフリー化のさらなる進展により、上りエスカレータを増設することになった。エスカレータは既存土木躯体に載せるかたちになるため、床面が高くなる。そのため、2箇所ある既存の「WEB FRAME」 のうちのひとつをアプグレードすることになった。そこで、「WEB FRAME」を3体の仮想の回転楕円体で変形させながら押し上げる、というコンセプトをとることにした。
実際に現場で部材を変形させることはできないので、このコンセプトに従って、全体の半分ほどを新規に設計・製作している。
旧「WEB FRAME」 は直線材で構成されているが、新「WEB FRAME -Ⅱ」は回転楕円体で押し上げるという仮想の方法によるため、曲線材により構成される。

既存の「WEB FRAME」 の端点から回転楕円体面に沿った曲線を発生させる際に、その曲線群には所定の分岐条件を満たす必要がある。
この発生プロセスに、新しいプログラムを用いている。
回転楕円体周囲の既存部の端点を新しい発生点として、楕円体表面に複数の曲線が伸びる。
それらの交点と分岐角度とその数には、実際の制作・施工上の制約がある。
(ちなみに、駅の、利用者が通る部分の工事はたいへんである。使えるのは当然ながら終電と始発の間。その間に資材の搬出入や足場の組立・撤去も行うので、実質の工事時間は一日2時間程度しかない。毎夜、組み立てては解体、の繰り返しが続く)

そうした、幾何学以外の条件があるので、楕円体に沿ったかたちならなんでもいいというわけにはいかない。
分岐と交点の数と位置は連動するので、ひとつずつ単独で決めることはできない。
そこで、このプログラムにより、制約を満たす曲線と交点を同時に生成することを可能にした。

仮想の回転楕円体は、3体ある。既存部を「押し上げる」ようにプログラム化された2体と、先端部に浮遊する、より大きな1体だ。
その先端部の楕円体に沿って展開する曲線部材は、閉じることなく放射状に拡散していく。
この放射の「勢い」は、プログラムによるものではなく、「手によるスケッチ」が描き出した。

こうして、「WEB FRAME -Ⅱ」は、プログラムによるウエブパターンの生成と、手が描く軌跡による拡散形態との、協同作業により生み出された。
もとの「WEB FRAME」 には、同じかたちはひとつもないが、各部分だけを取り出せば逆にどこも同じようにも見える。これは、今のウエブネットワークの、等価・均質性にも関わることかもしれない。

これに対して、「WEB FRAME -Ⅱ」は、先端に向うに従って、均質ではなくなる。
それは、均質なネットワークと重なりながらも、同時にそこから逸脱できる(かもしれない)「意思」の、並走の可能性とその方向を示そうとしている。
それが、「プログラムと共存」する「手から紡ぎだされる線の動き」、で可能なことかどうか、それはこれから、さらに探求されるだろう。

ユニバーサルデザイン

上りエスカレータ増設に伴うユニバーサルデザイン化の設計と工事は、「WEB FRAME –Ⅱ」に先立ってその2年前に行われた。
ここでは、障害のあるひともないひとも使いやすく、というユニバーサルデザインの基本に基づき、それぞれの目的のために何かを加えていく、のではなく、できるだけひとつのアイテムがどの目的にも応えられるデザインを求めた。

手摺と車椅子用ガードは別な要素にはせずに、一連の連続体とした。
非常ボタンは独立した柱で立てるのではなく、手すりと一体化させて見やすく押しやすい位置に付けた。
サインと防火シャッタのケースは別々ではなくひとつにまとめた。

これらはちいさなことだが、どの駅でも同じように要求されるアイテムである。
その多くは、ふつう、「あれが必要です→では取り付けましょう」、「これも必要です→ではそれも付けましょう」 という具合に、その都度方式=加算方式で設置されている。
相互関係を調整せずに加算していくと、装備としては十分でも、かたちや機能が散らかって、どれが何だか不明瞭で、結局使いにくくなることも多い。
デザインの機能は整理整頓にもあるのだから、「機能→解答」の回路を少し「整理」していけば、飯田橋駅に限らずどんな駅も、より使いやすく、もっと気持ちよく、なっていくことでしょう。