ON-DEMAND CITY ID-II 1995

誘導都市シリーズの中では、この「オンデマンドシティ」が人工生命のプログラムに近い。
これは、必要なところに必要なものがある、そんな街をつくるためのプログラムである。

都市の中の施設機能、たとえば、学校と家とコンビニとゲームセンターと病院。
それらはどんな位置関係にあったらいいのだろうか。機能配置を最適化することができるだろうか。

施設機能配置は経済原理で決定しそうな気がするが、実際には初期のゾーニングに大きく左右されている。昔ながらの住宅地が突然、歓楽街に変わることはあまりない。

その拘束を解いて、機能間の関係に忠実に配置が動けるとした場合、いかなる配置パターンが生まれるか、このプログラムは、それを見る。

まず、各種の機能を単位として、その相互の最適距離を設定する。
そのマトリックスに従って配置状態を評価するプログラムをつくる。
各機能単位ごとに、使用する数を、実際の街の標準的な値をもとにあらかじめ決めておく。

初期状態は、さまざまな機能の単位が街の中にランダムにばらまかれている。
そこにプログラムが作動すると、機能単位が少しづつ移動し、そのつど評価され、評価点を上げるように配置が変化していく。

ひとつの要素が少し動けば、同時に他の複数の要素との距離も変化することになるため、結果は一律にはならない。
一方には良いことも、他方にとっては困った事態を引き起こす。
そうした複合状態の、行く末になにがあるのか、プログラムはその一端を明らかにする。

その結果、設定上は接近するはずのない住宅どうしが集まって集合住宅地をつくりだしたり、多くの機能が集中するセンターが出現したりする。 同じ設定マトリックスでも、試行のたびに結果は変わる。 しかし、同じマトリックスから生まれる結果には共通した性格がある。

要素の数が多いということと、関係が絡み合っているということが、単純な設定にもかかわらず、多様なパターンをつくる。
その結果は、「要求」の力学を視覚化したものになっているはずだ。

ここに揚げた例では、結果をわかりやすくするために学校とか住宅といった既存の機能単位を使ったが、マトリックスに入力する単位はそれに限らない。
例えば、具体的な施設と結びつく以前の、ひとの基本的な要求、寝たいとか、動きたい、といったものを単位とすることもできる。
そうした基本的要求を単位としてプログラムを走らせると、どうなるか。

その結果生まれる要求のクラスターは、現在は存在しない機能の組み合わせとなることもある。
学校とか住宅といった既存の名前では呼びようのない施設が出現する。新しいビルディングタイプが誕生するのだ。

名付けようのない施設の立ち並ぶ街。
その街で初めて、都市の欲望は、素直なかたちを見せることだろう。

ひとの気まぐれなDEMANDが、気まぐれな街をつくるとは限らない。
大勢の気まぐれは、あるかたちを描き出す。
そのかたちは、今はまだない、しかし、潜在的に望まれている街の姿なのかもしれない。