つくばエクスプレス 柏たなか駅2004/5

流れの中の、さかな

切り込まれた布/流れのなかの魚

どこまでも続く土木の高架の一部がふわりと膨らんで、この駅になっている。
この建築は、そうした成り立ちを素直にかたちにした、オブジェクトである。

全体は3層の構成で、道路より一層上のペデストリアンデッキからコンコースが続く。
プラットホームはその上の階にある。
道路レベルの階の機能は未定である。
駐輪場やコンビニエンスストアだけでなく、市の公共端末とカフェ、それに進行中の農業公園の補助機能を組み合わせた新しいタイプの広場的スペースを市に提案したのだが、なかなか進まない。
そこで、この階がどう利用されても全体のデザインが成立するように、上層を分離したデザインとした。

最上階はひと続きの面で覆われた滑らかな流体として、その一部をめくるようにして立ち下げ、コンコース階も部分的に包んでいる。
断面形状は長手方向に変化していくため、同じ断面の部分はない。
この形態は、近くを流れる利根川のイメージと呼応しているかもしれない。

こうした外装は雨水の流れた跡に汚れが残りやすい。
それを少なくするため、スリット状の樋を横に何本も走らせている。
これは流体にナイフで幾筋かの切れ込みを入れたような効果を生んでいる。
それは一枚の布に切れ込みを入れて衣服をつくるようなものかもしれない。
外からは見えないが、窓の下にも横樋を設け、極力、汚れが目立たないように配慮した。

架構は「柏の葉キャンパス駅」のようなハイブリッドではなく、下2層のRC土木架構の上に上層のS造が乗る、鉄道駅では一般的な構成である。
上層のS造は、輪切り状のメインフレームに対し、長手方向をパイプ梁に分散し、これをメインフレームの下部面外に走らせて、全体の方向性を強調している。