Venezia Biennale2000

the FLUID CITY / SUBWAY2000 / ファイバー ウエイブ- Ⅱ

ベネチアビエンナーレは、2年ごとに「建築」と「アート」とが交互に開かれる国際展覧会です。ことし2000年(:記述時点)は、「建築」の都市で、世界の多くの建築家が招待されて展示を行っています。会場は国際テーマ館とも呼べるアルセナール地区と、各国のパビリオンが並ぶジャルディーニ地区に分かれています。
この展示は、そのアルセナール地区を入った最初の広間を使って行われています。広さ約440平米、天井高6mの、広い空間です。

今回のキュレイタであるフクサスによって設定されたビエンナーレ全体テーマは、'city: less aesthetics, more ethics'(都市・美学より倫理を)というものですが、当方の展示では、これを、「どちらか一方ではなく、両方をかなえる道を探す」、と解釈して、インスタレーションを行いました。

左右の両端にあるように思えることが、実は違うレイア(=平面)に載っていて、そのレイアを重ねれば、両端にあったものを同じ位置に持ってくることができるのではないか。
そうすれば、どちらか片方を選ばないと行けないという脅迫観念から逃れて、もっと自由な世界をつくることができるのではないか。
そういう、レイアを重ねる方法を探そう、という、趣旨です。

設営の様子

「ファイバーウエイブⅡ+」で囲まれた円形の空間に、「地下鉄プロジェクト」の模型が浮かんでいます。
その下のモニタでは、「誘導都市」等の画像が並行して流れています。
「ファイバーウエイブⅡ+」では、「フアイバーウエイブⅡ」のレイアウトを変えて内部空間をつくりました。東京のICCの時に開発した、世界の都市の風をリアルタイムに再現するプログラムは、ここでは用いていませんが、強弱のある風をつくりだす仕組みが働いています。

「ファイバーウエイブ」シリーズでは、かたちは、風が決めます。
設計者はすべてを決めるわけではありません。
しかし、空間は設計者の意図に従っています。
決めないのに、決まる。どちらか一方ではない、両方の重なり。
このしくみは、「地下鉄プロジェクト」にも共通です。
そこでは、コンピュータプログラムで建築を「発生」させる新しい試みが実行されています。
生命体のように生まれ、さまざまな条件を解決しながら成長する建築体。
コンピュータプログラムは厳密な論理で組み立てられています。

しかしその一方、できあがる空間は、あいまいで複雑な存在です。
論理と気持ち、思考と感性、積み上げと直感、決めることと決めないこと、そんな、両極端にあると思えるようなことを重ねあわせて、ひとつの建築空間にすること。

これは、「誘導都市」プロジェクトで追求してきた考え方の、実施版です。
外側のフアイバーウエイブⅡ+と、内側のプロジェクト、その両者は、こうした考え方を共にあらわしているのです。