地の天蓋1987

→ 炎の天蓋1971

場の内圧(1987年記述文)

場所には力がある。
地​の力が地殻を​押し​上げ、地表​を隆起​させる。
​​隆起した地​の​​​​​被膜は、そのまま膨らみ続ける。
​それは地の​皮膚のようだ。

皮膚は、今にもちぎれそうになるまで​引き伸ばされる。
細く薄く​伸びて、膨らんだ先端と地表との結合をかろうじて維持している。
紙のように薄い柱は、膨らんだ屋根を支えるというよりは、​飛び去ろうとする天蓋を大地に繋ぎ止める係留杭のよう​だ。
ここでは、建築​の構造​架構が重力と格闘することはない。
重力は下向きではなく、空に向かって上向きに働いているように見える。
ここでの構造物の役割は、重いものを支えることではなく、さもなければバラバラになってしまうかもしれない部分をまとめ、つなぎ合わせることのようだ。

物事を結びつけることを機能とする建築:多様で区別がつかない材料のスープのような世界が、その​機能がわずかに働くことで、まとまった形へと変わる。
デザインがその効果を引き出す。
形は​、結果としてのみ生まれる。