東京住宅 2006 |
決めたことと、決めないこと |
OUTINOUTINOUT/2つの内部と3つの外部 |
ある日、友人を介して、ひとりの品のいい年配の女性が私の前に現れた。 建築家はたしかに、時には墓も設計する。しかしこの依頼は住宅である。住むための器だ。 やがて、それは、「いまからの時間を、よりよく生きられる場所をつくってほしい」、ということだと分かった。 要求されたのは、死ではなく、生き生きとした「生」であった。
敷地の法的条件から、住宅は2層になる。 そこで庭と室内を交互に「重ねる」ことにした。 そうした空間の変化と、天候や季節の変化を組み合わせて、楽しく暮らせること。 日々の生活の中に、創意や発見の場を用意すること、それが、「生きる場所を」、という依頼への「解答」だと考えた。 |
連続と分離/浮かぶ水滴 |
この住宅は個人住宅だが、3世帯が住むため、集合住宅的な性格も持つ。 その吹き抜けに面したガラスの洗面室をはさんで、2Fの2世帯は視覚的に連続して その2Fの洗面台は吹き抜け上に張り出している。 |
波と流れ/干渉する波紋 |
「IN/OUT」の構成に重なって、「波のイメージ」がこの建築の全体に漂う。 メインルームの天井は梁型を緩やかな曲面でくるんでいる。 ここには3タイプの断面形状を組み合わせた。 ぬめぬめとした動物的な光と感触、それは今回の石の扱いに共通している。硬いものが硬くあってもあたり前で、さほどおもしろくはない。 やはり波状のキッチンのふたつのカウンタは、料理という味覚に関わる場所でもあり、視覚を越えて、手でなぜたくなるような、触覚に感応するオブジェクトとした。 敷地周囲の外周壁は波状の6パターン4色のレイアを重ねた塗装である。 その後の処理はデジタルだ。 このプログラムの主旨は、周囲の環境と調和を求めるが、昆虫の擬態のように周囲に溶け込んで姿を消そうとするわけではない。 どちらか一方の選択ではなく、どちらもある、という両義性・多様性は、この建築の性格のひとつである。(ただしプログラムは工事に間に合わなかったので完全にプログラムから生成したものではない。ここでの試行と波状の構成は、 「つくばエクスプレス/柏の葉キャンパス駅」 に関連する) 「床の間」が和室の要となる象徴装置だとすれば、「波」はいたるところに遍在することで、建築全体に対して同様の機能を果たしているだろう。 |
床の間/中心のゆらぎ |
「床の間」は部屋に求心性を与えるという役割上、西欧建築の暖炉に似ているが、暖炉のような実用上の機能は持たず、象徴性を唯一の機能としている。 この、「重心が中心にない」、という設定はおもしろい。 止まっているのに、動いていること。ここにも両義性がある。 |
設計者のしたこと/住むひとが決めること |
住み手は、日々ガラススクリーンを開けしめして、空間のバリエーションを楽しんでいるという。 ここで設計者のしたことは、ひとつの建築に複数のプランを用意し、そのあちこちに波を発生させる振動装置を埋め込むことであった。 生きて、動くことから、波は生まれる。
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| L:1.2Mbps M:600k S:200k partial sound |

























