木漏れ日の下で/ユニットピースの構成:
ひとつのユニットは幅2m長さ10mの大型ピースです。
構造架構は滑走するユニットピースを一時的にアンカーする、もやい紐のような存在です。
ユニットはこの構造に直結されていて、下地はありません。
ユニットピースの配列は上述のようなさまざまな条件のバランスの結果ですが、同時に、駅広から見れば全体が金属の塊のように見え、プラットホームに立てば山々の緑が透けて見える、二面性を持つように調整されています。
さらに、雨を上から順に受けて駅広には落とさないようにも考えられています。
全体は、そうした様々な「条件」をかなえた、一瞬の姿なのです。
そのピースの間で見え隠れする空からの光は、ホームの床に樹々の木漏れ日のような光を落としています。
部分を整理すること/全体との呼応:
プラットホームの照明は、通常の蛍光灯を吊る方式ではなく、HIDの点光源を柱に配列しています。
これは、「外のような中のような」というホームの特性を補強する、街路のような扱いとしたためです。安定器や配管は柱の中に仕込み、外部に夾雑物の出ないすっきりした配置としました。
照明にかぎらず、駅にはたくさんの通信・信号・電気・サインの端末や配管が、後付けで設置されます。それらは個々別々の既成品類で、取り付け方もアドホック的なものが標準です。
通常の建築と違い、駅では設計者にそれらを調整する役割が与えられていないので、そのままでは「ちらかった」印象になりかねません。
「新水俣駅」では、それらをできるかぎり調整しシンプルな処理にできるよう、それぞれの設置主体に働きかけ、一定の理解と協力を得られたため、従来の駅よりは「整理」することができました。
プラットホームのスピーカーも従来の吊りではなく、ホーム可動柵の中に組み込んでシンプルに処理しています。
ITVカメラも既成品のパッケージでなく、単純な円筒形にしています。
コンコースの天井材は、在来線特急の天井材と同型のアルミスパンドレルとし、車両デザインとのコラボレーションの一端としています。
コンコースの照明は、蛍光灯をずらしながら束ねた「クラスター照明」として、駅のコンセプトと呼応しながら、ローコストで効果をあげました。
ベンチも、ウイング状の木製ピースの集合体で、駅のコンセプトと関係するデザインとしています。
クラスター照明やベンチは駅の建築の一部であると同時に、滑走するピースの「別バージョン」であり、それは建築全体の「模型」でもあるといえます。
土木とのコラボレーション/駅と駅広:
駅は建築と土木の両方で成り立っています。
土木と建築は関係があまり緊密ではないことが多いのですが、つくるものはひとつなのですから当初から両者が協力して進めた方がよいことは明らかです。
地下鉄の「飯田橋駅」では、地下という土木架構の中の空間でもあり、この土木とのコラボレーションを求めました。
「新水俣駅」は地上駅なので「飯田橋駅」よりは通常の建築に近いのですが、今度は駅の外に駅前広場(駅広と呼ばれます)という土木の世界が広がっています。
駅と駅広は一体として機能するのですが、それぞれはふつう、あまり関係なく別のしくみでつくられているのです。
そこで、駅と駅広の関係に、ある程度の統合性を持たせるように働きかけをして、協力を得ることができました。すべてを統一する必要はもちろんありませんが、相互に呼応関係を持たせることは、駅前空間全体のバランスのために大切です。
このあたりは別項の「三つの駅を通じて」でも記しています。
「状態」としての建築:
この建築は、ひとつの大きな箱や、連続した一枚の皮膜ではなく、独立した要素単位の集合で全体ができています。
ひとつひとつは単純な部分が、数多く集まり、それぞれが半自律したルールで動いていくなかで、ある条件を満たした関係が生まれたとき、それが建築となります。
そういう、「状態としての建築」を生成しようとしました。
この考え方は、(ここではコンピュータプログラムは開発していませんが)、条件からの自律生成を行う「INDUCTION DESIGN/誘導都市」の方法に関係しています。

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