姿を決める、ふたつの作用。
この建築全体の形状を決定する要因は、ふたつある。
ひとつは内側からのもの。
内部の活動状態が形態に反映される。例えば、国会の会期中は膨らみ、閉会中には偏平になる。あるいは、その逆。見学者の多いときには再び広がる。
議場で乱闘の繰り広げられている最中は、内部空間は最大限にまで拡張され、皮膜は透明なスクリーンとなって、内部の光景が外皮に映し出されるだろう。
議員にもプライバシーはある。密会したいときには、自分の周囲の床壁だけを不透明にできる。密会をしている、ということを周囲に明らかにすれば、その内容は秘密にしていい、ということである。
この建築の形を決定するもうひとつのものは、外側からの力である。
全体が強風時にはスリークなフォルムとなって、風力抵抗を低く押さえる。地震時には構造ジョイントがアクティブ制震システムとして機能することは言うまでもない。
風や振動に限らず、外部からのさまざまな力に対して、抵抗値を最小にするよう、骨格と皮膚が変化する。
可変抵抗フォルムは、議会が世論の荒波に耐えねばならない際にも、有効に機能するだろう。
また、美しい夕焼けや稲光、といった自然のアースワークは、皮膜の光受容体に直接記憶され、皮膜の内外にプレイバックされる。白熱する議論の背景には、静かな朝焼けの景色などがふさわしいかもしれない。
さらに、皮膜のアクチュエータを振動モードにしておけば、建築の輪郭は一定せず、ブレた映像のように見える。目をしばたいて見つめても、その姿を描写することは困難だろう。
この建築では、建築はパッケージだからカタチはなんでもいい、という立場はとらない。
ここでは、形態は、なんらかの力学の反映として現れる。
それは、生物の世界に、多様な「かたち」が存在することにも似ている。
環境という、さまざまな作用の力が重なり合う場があり、その重なりのどれかに対応する状態として、形態が生成される。どの重なりを条件に選ぶのかは、その生物の任意だ。
(ただし、生物個体の意志、ではなく、DNAの意志なのだが) |